[医療モードのスイッチを点灯させるが、実際どれ程の効果があるかは分からない。
この身を構成する血ならば、治癒効果が見込める可能性はある。
腕を掻っ切り傷口に輸血するべきかと脳裏に過ったものの、結局実行することは無かった。
何せほんの少し前に、彼女が完全なガルーになることを拒ませようとしたのだから。
出来るはずがなかった。
彼女の手を両手で握り締めたまま、様子を伺う。
人に安らぎを与え、数多くの幸せを与えてきた優しい手。
その手の温度が冷たく感じるのは、きっと気のせいではないだろう。
己といえばつい先程まで怒りを露にしたが、今は心配、不安を隠しきれていない表情をしているだろう。
全て自らが蒔いた種であるというのに。
本来なら笑顔で「もう俺は君を傷つけないから、大丈夫」と堂々と言えれば良いのだが。
人の生命の危機時に表情を作れるほど、器用では無い。]