[ やがて話が変わって。
学者が自分の兄を告白したのだと囁いた後、
彼女は呆然とした顔をしていだたろう。>>3:290
あまりにも似過ぎた状況で兄を亡くしていると。
ローもサーラも、お互いに大切と慕っていた相手を、
直接、手にかけた同じような境遇であるのに。
淡々と、兄の一件について話をするロー・シェンの中で
嘗て慟哭と血の混じる涙を流した記憶は朧となっていた。
まるで、大したことではなかったかのように。>>0:324
昔のことと微笑むことが出来る理由を彼女は知らない。
けれど、似た境遇を体験した彼女ならば、
ロー・シェンの態度が度を越して落ち着いていることに
違和感を覚えても然して不思議ではなかった。>>3:291
兄の人柄や性格を語ったときの態度と、
兄の死について語る考古学者の態度とは乖離がある。
…それは大切な人間を亡くしたものにしか
分からないような微かな違和感ではあっただろうけれど。 ]