兄上が先頭に立たれれば、王宮内の兵に動揺が走るも必定。
守りは緩み、城はすぐに落とせようし、私を捕らえるも殺すも容易となろう。
この手の蜂起は、時間を掛ければかけるだけ難しくなるもの。
国の動揺、民の不安も大きくなる。
ゆえに、兄上はこの件には関わっておられぬ。
恐らくは血気に逸った白狼騎士団、並びにそれに同調した兵らといったところだろう。
…───そうは思わないか?
[リヒャルトの目を見据え静かに告げれば、さてどうだったか。
それでも疑惑の残らないわけではない。扇動したわけじゃない。
けど、”敢えて止めなかった”ならどうなるか、と。
一部の跳ね返りが軍を起こし、事を成し遂げ、それを次は兄が制したならどうなるか。その危惧は、未だ音になることはなく。]