― マーチェス平原(回想) ―[かつては見上げても届かなかった壁は、今は地に倒れて見下ろすばかりとなっていた。>>136感慨は湧かなかった。喜びも、哀しさも。記憶だけが、ひとつ重みを重ねる。近臣の兵が決死の表情で辺境伯の遺体を確保し、運んでいく。追いかけようとする兵は止めた。辺境伯は討った。その事実だけあればいい。ただ───]