[ 立て続けの攻撃に、苛立つように身を捩った巨狼が、振り上げた前肢は、しかし真っすぐには公子の身に届かない。
巨狼の死角から、黒い疾風が再び襲いかかり、その動きを阻んだからだ ]
ふ...
[ 狙ったタイミングを逃さず動いたトールの姿に、思わず笑みが零れる ]
[ 巨狼がこちらに気をとられれば、トールの刃が焔を裂き、矛先がトールに向かえば、その隙に乗じて氷の刃が襲う。
いつ引き、いつ攻めるか、言葉を交わさずとも、その姿が見えずとも、互いの動きが繋がり、巨大な敵を翻弄する、その感覚に、身の奥から熱が湧く ]