[心臓を抜かれた空隙に、ヴィンセントは自分の血を一滴二滴、降り注ぐ。胸郭の奥に宿る不定形の闇に血を与えるように。そうして、亡骸は影たちの手で城の外へ出させ、狼たちにくれてやる。骨までも森に還った後、死んだ少年になにがしかの未練が残っていれば、それは新たな影となって城に縛られることになるだろう。吸血鬼に喰われた者は死後までも解放されない、そんな伝説のままに。]