― 国境を渡る仕事人たち ―
[帝国での前線への連絡は、今や高級士官には伝書や伝令ではなく、魔法石通信で行われるようになっている。
しかし、国を跨ぐ遣り取りに、距離に制限のある魔法石は向かない。
宛名を代筆屋に頼んだ手紙は、何箇所もの鳩屋を経由し、軍用鳥によって、公国軍情報局にもたらされる。
時間はかかるが、網がばれては意味がないという遠まわしな一方的な糸。
一見すれば、差し障りのない、家族を気遣う内容の手紙だが――裏を火で軽くいぶれば、別の文章が浮かび上がる。
端的に書かれた、今回戦場に持ちこまれる戦略兵器とその威力、である。
開戦時に齎された「意図的に嵐を起こす魔器」は、信頼度の低い情報として扱われ、結果として公国軍は海軍力を著しく低下させることとなった。
今回齎される情報は「一瞬で橋を架けることのできる魔器」についてである。
帝国軍にて情報を漏洩する草のことを、情報局は「