― 夜明け ―
[城の中で楽しんでいた眷属らは、既に退去しているだろう。
夜明けの最初の光をファサードの深いひさしの下で待つ。
やがて街に最初の陽光が差し、コウモリらが霧と化す。
黒い霧は公の前に集まり、積み上がって馬車の形を為した。]
では、私たちも戻りましょう。
[馬と御者を備えた馬車は、重厚かつ豪奢なもの。
窓のない車体は黒塗りで、金や螺鈿の象眼が施されている。
中は外見よりもなお広く、ゆったりと寛げるスペースがあった。
少女を柔らかなソファーに横たえ、自らはゆっくりと寛いで、走る馬車の揺れに身を任せる。
馬車が向かったのは、ひとつの空き家だった。>>148]