― 回想/リッター家にて ―
[あれは十数年前。エリーザベトの母がまだ存命だった頃。
両親に連れられて、リッター家を訪れた事があった。
末子の顔見せの意味もあったのか、教えられていた挨拶の言葉を向こうの家族の前で言わされ、向こうの女の子も同じような挨拶をしていた。
その後大人たちは難しい話を始めてしまい、二人の少女は中庭に連れ出されて放っておかれたのだった]
[互いに人見知りで、どう話し掛ければいいのかもわからなくて。
ただ、二人とも一族にとって不要な存在で、居場所を見付けられないままに育ってきた境遇も、なんとなく感じ取れていた]
エリーザベト、さま。
……エリーって、呼んでいい?
[両親からの言いつけをこっそり破って、女の子の名を縮めて呼んだ。
ヴォルケンシュタイン家とリッター家は、仲がいいけれど友達ではない。
でも、自分たちは]
ねっ、おともだちに、なろっ