[水差しを傾けて氷のナイフを作ると、ヴィンセントは死んだ少年の胸郭を切り開いて心臓を取り出す。まだ弾力は失われていないものの、動きを止めた心臓はどことなく頼りなさを感じさせた。掌におさまるサイズのそれを、ゆっくりと握る。心房に残っていた最後の濃い血をショッグラスに溜めると、ヴィンセントは柔らかな心臓を影へ手渡した。] いつのものように、私のラボに。[犠牲者の心臓をミイラにして、標本のようにピンで留めておく、それがヴィンセントのいつものやり方、であった。]