― 回想・地下倉庫 ―
[昏い倉庫の床の上、互いに言い訳と理由で固めながら重ねる行為の虚しさは、その身を味わうたびに次第に薄まって、やがて快楽に完全に呑まれてしまう。
何時だってそうだった。
突然「今日から第二王子の被験者及び愛妾となれ」と、日々の自由を奪われた時も、同じ境遇で称えあい、励ましあってきた友が自分の腱を切った時も、城内で反乱が勃発した時も。
心を抉る出来事は己の洞をすり抜け、その痛みを「なかったこと」にして消えていく。次第に慣れて痛みは痛みでなくなっていくのだ。
与える傷が快感になるのも同じ原理なのだろう。そして己もその原理を知るが故、交わる相手を乱暴に扱う事に慣れすぎていた。
カレルと初めて出逢ったあの日もそう、奪われたものを取り返すことが出来ないから、代用品を奪い、征服感を覚えて満足を得る。]