[座っている状態から立ち上がった為、一歩足を引けば、椅子の足にぶつかるのも当然。
間抜けにも体勢を崩せば、隙をつかれ、床に縫い止められる。
衝撃を和らげようと、背面を強化し耐え忍ぶ。
腹に掛かる男の体重は、人の女としての軟さを残しているせいで、圧迫されて気持ちが悪い]
………ふふ、とてもいい趣味ね。
親の――――乱鴉の大公、その人の影響かしら。
[《バルシュミーデ》
その姓を聞いてから、ずっと気にかかっていた。
けれど、今まで思い出せなかったのは、元老に関しての記憶を、無意識の内に封じていたから。
白絽侯に会い、己の矛盾を知れば、封は意識的に解かれ、記憶は蘇る。
そして、かつて父が言っていた言葉も―――――]