そう、かな…。
俺はあいつらを、騙しているのかもしれない。
[>>166自嘲するように笑って。
それでも男の素直な気持ちは、嬉しくて。
同時に語りすぎてしまったと、少し反省する。
気にはしないようとしてはいたが、少しナイーブになっているのかもしれないと。
十年前を思わせる、嵐の気配のせいだろうか。]
ああ、嵐の夜に。
[乾杯、とガラスを合わせると、澄んだ音が辺りに響く。
ディーターとは何を話しただろうか。
彼の大陸時代の話だったかもしれないし、また別の話だったかもしれない。
酒の力のせいか、自分も普段よりわずかに饒舌だったか。]