[ともあれ、腕を治さねばまともに風精が応じない。暴発紛いの陽動にはなるが、指向性を絞れないなら、戦力として数えるには難が在る。風の声を聞き、廊下に脚を進めた。従者伴うまま、義務を果たさんとする男はいずれ、心の半分を失った獣にめぐり合うこととなるか。>>42――いつも運命は過酷にて、人の前に立ちはだかる。救世主だけは、そうと生まれるのではない。その頂に辿り着いたものが、救世主《メシア》の名で呼ばれるのだ。]