『恋人を探してるんだ
いやぁ、手紙1つ置いて出ていかれちゃってねぇ』
[次いだ言葉は領主の耳には届かなかった。
手紙を見せた道化師の、その瞳は何も映さない、感情の篭もらない色だった。
まるで当て処もない闇路を歩く迷い子のような、光の灯らない瞳。
道化師の化粧だったのか。泣いているような気がしたのは錯覚だろうか。]
――――…来るか? お前に良い条件の仕事、宛がってやるからさ。
[置いて行かれるのは辛いもんだ。いつだって。誰だって。
平気になった時に――この昏い瞳に気付かなくなった時こそが、領主たる男の一番の恐怖だった。
深い穴を落ち続けている。――いつまで続くか、わからない旅路。*]