―領主の思い出>>29―
女だてらにきっちりと仕事をこなす、女性の噂を聞いたのは何時のことだっただろうか。
怠けがちな門番を探していた時に、彼女の噂を耳にする。
勤勉で実直に仕事をする女性の警備型がいるのだと聞いた。何故女性がそんな仕事に就いているのだろうと不思議には思ったが、深くは聞かなかった。
信頼と実績の誉れ高い女傑に会って見たかった。
――正直に言おう。
一目で雇うと決めた理由は、同じ業種に就いている双子の従弟の兄の方と彼女が被ったからだ。
苦労性。お人好しを絵に描いたような、可愛い方の従弟と、彼女は少しだけ似ていた。
その瞳を見ればどれだけ誠実で在り続け、またどれだけおのれを自戒することが出来るかが、うっすらと悟ったからだ。