[暫くのち――荒い息と笑い声が、その部屋には響いていた。
汗まみれの男が、全裸で床に大の字を描いて転がっている様は、異様であろう]
――……は、ぁ。は、はははは――ははは。
[それでも、かれは笑わずにはいられなかった。
彼女の髪の性質を帯びて増殖した細胞は、確かに異変をもたらした。
ただそれは、肌の色合いが微妙に変わるだとか、金髪が生えるだとか、その程度のもので。
爪が鋭く伸びることも、獣じみた体毛が生えることも、耳が尖ることも。
いわゆる人狼の特徴とされているような変化は、なにも起こらなかった]
くは、ははは――私はやったぞ、やはり私は正しかった!!
[それは己の理論か、あるいは、彼女を信じた判断か――、
いずれにせよ、【アリーセは確かに人間だった】と、男は確信しただろう。
増殖を終えて死滅した細胞――、
抜け落ちた金髪や、垢やフケが散らばっているなかで、男は笑い続けた*]