―回想 7年前 1/2―
[当時はまだ灰色の髪を結わえて背中まで流していた、眼光の鋭い男。
いずれディーター・ゲルマンと名乗ることになるこの男、名をカイ・エーベルトという。
彼は夜盗を生業とするものの、たまに、その悪名を買って仕事をさせる者が居る。
この時もそうだった。
カイはこの時、金貸しからの仕事の依頼を受けていた。]
ふむ……この家の金を奪ってきてほしい、と。
「そうだ。私はあの家に金を貸したが、放っておいても戻ってはこないからね」
[金貸しからの答えに、カイは僅かに驚いた表情を見せる]
借りた金を返さないのか。なかなかの不届き者だな。なぜそう解る?
「あの家は私以外からも色々と金を借りている。
こういう借り方をする者は、大体この後、ぱーっと使って一家心中というのがパターンだからね」
[再度、カイは頷く。納得した様子で。]