[少女の僅かな身の動き>>165を目にすれば、肩を竦めるのは続く言葉へと。
身じろいだ彼女の心の機微など青年にはわからなかったから。]
――…さあ?
この村の人間に化けた狼が――持ってきた、とか。
[なぜ、滅んだ村のことを克明に記した書物が残っているのか。それがここにあるのか。
青年は知らない。だから、冗談めかして答えた。]
――…世の中には、人に化けられる狼ってえのもいるらしくてな。
曰く、村の中へ紛れ込んだ狼に気付くことができなかった村人たちは全員狼の腹の中…ってさ。
[本の一節を読み上げたなら、少女の困惑したような表情は少し違ったものになったろうか。
あまり怯えているようでなければ、挿絵を見せようともしただろうけれど。]**