――……ッ、
[夫が身の内に繋ぐ獣、ほんの一瞬牙を閃かせた錯覚に竦む。
ふる、と首を振って、戯れを起こす気はないと無言の服従を告げる。
それは、『信じられる』という肯定を意味しないものの――
何にせよ、一度嫁いだ彼の許から、自ら出奔する気などないから]
…まだ、かしら。もう随分と、貴方とこうしている気がして。
[髪を梳く指も、彼が放つ夜の気配も、しっくりと肌に纏わりつく。
彼の言う通り、幼子相手にできない彼是は、褥を共にするようになってからの事。
それなのに、定められた一路を辿り、行き着く先は此処以外になかった気がするのは、何故だろう]