― 灼熱の闘技場周辺 ―
[元いた場所に戻ると、建物の一部は壊れたままだったものの、先ほど変わらない活気に、ここの住人の自力を垣間見る。
先ほどよりよく周囲の様子を見ながら歩き、途中何かの肉の塊を受け取ると、素直に端にかぶりついた。よく焼けぱりぱりになった皮の端を、剥がすようにして口に入れる。行儀は良くないが、好きな物は先に食べる性質だった。
空腹だったこともあり、剥いだ皮の中から現れた薄色のつるんと、肉汁と油で艶めいた薄色の肉に無言でもくもくと歯を立てる。
食べる事に夢中で当然蝶の事には気づかない。交渉事や情報収集はすっかり任せて、二本目を受け取るとこちらももくもくと食べていた。]
…ん。少しならこっちも持ち合わせはある。
[ようやく食べ終わった頃、懐に入れていた貨幣を取り出して開いてみる。
そういえば中身をきちんと確認するのは初めてだった。
いくらかの硬貨と、貨幣の代わりにか、宝石のようなものがひとつ。
もっとも当人はこれも貨幣の一つと捉えていたが。]