[そんなやり取りをしている間に、輪を介して届くのは、そろそろ着く、と知らせる声。
ちら、と後ろを振り返れば、見慣れた小柄な船影が目に入る]
……さて、そんじゃぼちぼち。
[言いながら、くるり、左の手首を回す。
応じて生じる糸が微かな光に煌いた]
お暇すると、しましょーか!
[どこまでも軽い口調で言いつつ、アイリを引っ張って船縁に寄る。
タイミングよく距離を詰めて来たシュタイフェ・ブリーゼに向け、勢いよく左手の鋼糸を伸ばして]
んーじゃ、お邪魔様でした!
[それが支えを得ると、右腕でアイリを引き寄せ、抱えるようにしながら甲板を蹴った。
不安定な状態だが、元より、身体能力に優れた妖白狼の血脈。
そこに風精の援護も重なれば、無事の帰艦も容易く──はないが、そう難しい事ではなく]