[血親が掌を肌蹴るのは欠けた視線の端に収めつつ、男は壁際に立って外の様子を窺っていた。
侵入者が手練れであれば、城主達も少なからず怪我を負う筈だ。
吸血鬼の身は人間よりも丈夫で再生能力も高いが終わりはある事は血親から聞いて知っている。
彼女は時折自分の殺意を煽ってくるのだが。
客人として通されはしたが、果たしてこのままでいて良いものか。
――この血親が大人しくしているとは思わないのだが。と、ちらと視線を真っ直ぐに向けて。
その時に血親が指先を窓辺に夜空へ差し伸べたのが見えた。純白の蝶は彼女の掌に止まり、その血を受けて翅を黒に染める。]
…あんたはこれからどうするつもりだ?
[蝶を放った血親の掌は再び黒に隠される。
男は壁に身を預けたまま、問いかけた。]