[戦場で商売をする行商人が、カタリナにとっては珍しくあるようだった。
遠慮がちに投げかけられた疑問に、アルビンは破顔し、ごくごく軽い口調で答えた。]
なんでも、売れますよ。ここに転がっている石ころから、有名な絵画まで
でも、戦場ですから、やはり食べ物や着る物が多いですね
[どこからか、ふわりと漂うパンのにおいをかぎながら]
それから、ケガをした兵隊さんに
薬代わりの薬草をお願いされることもあります
[物資が常に不足する戦場では、需要が絶えることはない。
貴族しか着られないような仕立てのいい布や宝石、
古くから使われる珍しい武器なんかも手に入ることもある。
特殊な場所ゆえ話せるようなことは限られるが、
おもしろい話もないわけでもない。
機会があればまたお話しますね、と言葉を最後に加え、
アルビンは宿前でカタリナに別れを告げる。
再度礼を述べ、時間を割いてくれた彼女に手を振った。]