[勇気を振り絞り、彼の方を真っ直ぐ見つめながら言葉を紡いでゆく。]
わ、私、ユーリエといいます。
昔の話なので覚えてないかもしれませんが…私はここで、あなたに助けてもらった事が――
ち、違った…っ、あの頃可愛がっていた狐を助けて頂いた事があって。
そのお礼を直接言えたらなぁって…ずっと思っていたんです。
今日、偶然姿を見かけたもので、声をかけようとしたんですが…
どうしようかと迷っている内にこんな事になってしまいました。
…あ…ごめんなさい。突然こんな事言われても、困っちゃいますよね。
[素性を知られないようにと織り交ぜる嘘は、すぐにバレてしまいそうな程の出来ではあるが、どう受け取られるやら。
誤魔化すように付け加えた最後の言葉と共に、周囲に視線を這わせた**]