― 市街地 ―
…………あ、れ…
[体を起こし髪をかき上げてみれば、そこにあるのは彼女の家族。
彼女以外の名前を意識に留めるつもりなどなかったので名は知らないが、彼女が大事にしている写真の中で、団欒する姿を見まごうはずはない。
それなら彼は探し人であるのだが、何故今になってここに在るのだろうか。
彼がいるはずであった場所は館からは遠く、先に血族になったのであれば館にいるはずではないか。
そもそも、血親がなくなったからといって、ここまでの魔力枯渇状態に陥るとは……館にあった血子らを見てもおかしい話なのではないか……
数秒ほど、脳が状況を受け入れるのを拒みはしたが、それが済めば男は困惑に震える湖面を抑えこむかのように、一度だけ唇を噛み締めて]