[それでも、彼女の覚悟を無駄にするほどお人好しなつもりもない。すい、と手を滑らせて、少女の肩越しにその背中へ手を伸ばす。中途半端な“印”のままの不可視の仮面を、手品のように彼女から引きはがした]そういえば、貴女の名前をきちんと聞いていなかったわ。……それから、何を望んでいたのかも。[それを知りたがるのは野暮だと、フィオンには言われたけれど。思い出して軽く鼻を鳴らして、取り外した仮面を再度自分ではめるのだ]