まって。
[つぶやく声になど耳をかさず、近づいた身体を手で制しながら。
けれど視線は彼のほうではなく、入ってきたばかりの扉へと]
いまなにか きこえませんでしたか?
[彼が"何を"しようとしたかになんて気づかないまま。
下から聞こえたかすかな音……そう、だれかが扉を開けたような、その音に。
瞳ににぶい昏さをたたえれば、警戒したようにぎゅっと手に持った兎の人形を抱きしめます。
それはきっと、彼が牙をたてようとするほんの少しの前のこと。
か弱いドロシーの制止など、彼にはまったくもって無意味でしょうから……
もし そのまま噛みつこうとしたのなら、それはむずかしくはなかったでしょう]