[物心付く頃には両親は他界していた。
けれど寂しくはなかった。自身の属する民は懐広く、子は皆の子として皆、大人たちの柔らかな眼差しの中で育てられたものだ。
けれど、定年間際だというその軍医は妻を早くに亡くし子も居ないと言う。すっかり快復し見慣れぬ環境に興味を示し始めた14歳の少年に、良ければ養子にならないかと持ちかけたその人の瞳は明るさの裏に寂しさを湛えているようであったから。
共に暮らすことで恩返しの一部になるならばと、それを受けることにした。
まずは学業からと、一定の学業を修めた。友人も出来た。
軍人の道を歩むことへは首を振ったが、身体を動かすのは悪くないと、養父の伝手から武器の修練場を紹介して貰いもして。
ディーンやカークらの間で覚えた、子供同士の剣士遊び程度だった剣も、正規訓練を受けた軍人とまでは行かずともある程度渡り合えるであろうほどには身に付けることが出来ている。]