[“おかえり”には、“ただいま”と応えるものだ。
常識では知っている。
でも、自分の意思で帰ってきたわけじゃない後ろめたさと、
言ったことのない言葉を、唇が紡げなくて]
――…ありがとう。
…君にも、ナンバーかココのような識別名はあるのか?
[あの博士が、自分を、無条件に「おかえり」と迎えろなどと、
指示を出すとも思いにくい。
目の前の“ジークムント”の単体の判断だろうかと、
瞳を見上げて、謝意を告げた。
“博士のアンドロイド”に多少の葛藤と反発はあったけれど。
このアンドロイドが悪いわけじゃない。分かってる。頭では。]