ちゃんとこっちを向け。
[こちらを見ないその態度が、何故だか異様に腹立たしいく思い、抱えていた膝を離し立ち上がり、背を向けたままの男へ近づこうとするも、割ってはいるような蝶の存在に意識は大きく削がれてしまう。
だがこちらも同じく、蝶が運ぶ言伝には気づかない。
点滅は見えているが、点滅しているという認識だけを受け取って、文字は全く見えていなかった。
ひと時休んだのならば次は動く事には異を唱えず、嘶くゼノを宥めるように撫でてからこちらもその背に乗り移動した。
駄目だこの人たちと黒馬が思ったかどうか、人は知る術を持たない。]