― 街中・広場 ―
[ 昔馴染みの彼>>141に対して
丁重な態度を取るようになったのはいつからだっただろう。
昔と呼べる頃には例のソマリだとか、
初対面のチェンバレン嬢を相手にしたように
養父に似た口調で話していた時期もあった気もするけれど
立場の関係上、初対面から繕って話していたかもしれない。
屈託のない子供のころならば、
あるいは歌の邪魔になるような囁きも
必要のないものだったかもしれないけれど。
今の"宮廷画家"という立場ではそうもいかないのだった。 ]
……一曲だけですからね?
[ この曲だけだからと言われて、
渋々といった表情を作って見せて頷いた。
吟遊詩人の歌に足を止めたのは偶然のこと。
そこに彼…ウェルシュ王子が居たのもまた偶然ではあれど。
見つけてしまった以上は見逃すわけにもいかない。
…"散歩"と称して王宮の外に出る彼が、
何を見、聞き、得ているのか薄々と察していたとしても。 ]