[繭は静かに箱舟を包んでいく。同時に、箱舟の中もまた静寂の眠りにつき始めた。真白い揺り篭となった繭は空を漂いながら、眠る人々の心を洗い、無垢なる人としての目覚めを待つことになるだろう。───そんな奇蹟の顕現に、僅かな異物が混ざった。>>159天の子を貫いたと同じ刃で流された血は聖句の糸を翳らせる。宙に浮かぶはずだった繭から根のように灰色の糸束が伸び、大地と繭とを繋ぎ止めた。それが何を意味するかは、今は誰にも分らない。]