―霊安室―
[霊安室を開けると独特の静寂と、ヒンヤリとした空気が纏わりつく。
誰も使っていない霊安室。
まだ使っていないことに安心していた。
できれば、使わなくて済めばいいと思っていた。
それなのに。]
……君が、初めての使用者になるとはね。
[まだ若くて未来があったのに。そう思うと悔しくて堪らない。
男は1つの台にカシムを寝かせると、シーツを持ってきた。男はそれを掛けようとして、もう一度カシムを見る。]
……少し寒いですけど、ここで待っていてください。
大丈夫ですよ。ちゃんと君をご家族の元へ連れていってあげますから……。
[と哀しげな顔でカシムに言うとシーツを掛け、正式な敬礼をカシムに。]
お疲れ様でした。カシム・アイスナー二等兵殿。
[そう言うと男は霊安室から出ていった。]