[そんなアキレアだから、
なんとなく、人には言わない方が、触れられない方が良い気がして。
だからペットっす、とか適当にごまかしていたことだろう。
見る人が見ればわかってしまうのだが、船の上の生活故に、
幸いにも、今まで生物サンプルとして連行するような輩に出会うこともなく。実際連行されることもなく。
だから言わないけど、わかる人には隠さないというスタンスの元で行動していた。
痛みも随分引いた。
傷――といっても擦り傷や打撲程度だろうが、を食った毛玉は満足そうに女の肩で揺れている。
そんな女の耳が、小さな呟きを拾った。
見ると、そこには男性がいた。>>117
彼も逃げ遅れたのだろう。見たところ乗員ではないようだ。
5年前まで船に乗っていたその人と、女は直接あったことはなかっただろうか。
元々警備部とは、関わりの薄いところにいるから見たことがあったとしても忘れてしまっているかもしれない。
傷を治すところを見られただろうかと思ったものの、
名前を云い当てているのだから隠しても無意味というところに思い当たる。
だから少し顔を曇らせたまま、座った状態で声をかけた。]
……そうっす。アキレア、っすよ。
アナタも逃げ遅れてしまったっすか?…大丈夫、っすか?
[まあ怪我をしてふらふらだったのはこちらの側なのだけど。
乗客のことを気にかけてしまうのは癖のようなものだ。*]