[義父との出会いは6年も昔に遡る。
まだ草原に暮らしていたある日、酷い熱病に罹り生死の境を彷徨った。
彼方此方遊びまわっていた所為で、
草木の毒か虫の媒介する厄介な病原菌でも拾ったのだろう。
一族に伝わる薬草や民間療法ではどうにもならぬ、と、
平原を縦断し州都への帰路の途にあったラモーラル軍兵に同胞たちが助けを求め、その中に軍医が居たらしい。
らしい、というのは、熱に浮かされて記憶は途切れ途切れで、
目を覚ました時には州都の診療所で治療を受けていたからだ。
診てくれていた軍医は、人好きのする笑顔が印象的な
口髭を蓄えた初老の男性だった。]