……うん。
本当は、私だって君の絵を眺めていたいよ。
[思い返すのはやはり、幼い日の風景。
あの頃やっぱりどう描いてもウェルシュの絵はへたくそで、想像力がありすぎるのか、どうにも現実離れした絵はローレルの絵には及びもつかぬもの……だと、少なくとも本人は思い込んでた。
ある日、彼女が小鳥の絵を描いていた日のこと。>>86
並んで絵を描いていたウェルシュは、感心して彼女の絵を覗き込み、こう言った。
─── ねえ、この絵ちょうだい、と。
どんなやり取りがあったのだったか、結果的に子ども同士の絵はとりかえっこになり、ウェルシュはローレルの描いた小鳥の絵を部屋で何度も眺めた。その絵はいつしか大切に、私室の机の中に今も仕舞われてある。
誰に言うこともない、ささやかな彼の”宝物”として。]