-回想-
[シュテルンの発作を目撃したのは、タクマの所へ土産と異国の酒を届けに行った時だったか。彼が引き取られて、それほど過ぎてなかった。
呼び鈴を鳴らしても返答は無く、勝手に酒だけ置いて帰ろうとドアを開け――蹲る少年を発見した。]
おい?
[その当時、まだ一言も口を聞いてくれなかったその少年は、奇妙な表情をしていた。
顔色が悪い。そして開いた口から呼吸音が続く。乱れた、荒い呼吸音。
何よりも、両眼。開いているが、何も見ていない。
自分の脳内の奥にある何かを辿るように、ただ見開かれているだけだ。
そして、何の意味があるのだろう。何度も右手が動き、自分の髪の毛を引っ張っている。
――まずいだろ、これ。
どう見ても何らかの発作だ。
精神的なものか?
この子が戦災孤児らしい話は聞いていた。
何か、トラウマを抱えているのかもしれない。]