[書庫の重い扉に手をかける。金属製の握り手はひんやりと冷たい。日差しの中にいれば暖かいとはいえ、秋はもうすぐそばだった]
さて、お仕事しますかねっと。
[ぐっと力を入れて引く。頑丈なアームのお蔭で、見た目以上にその扉は重かった。
書庫に足を踏み入れると、不意に眩暈に近い感覚に襲われた]
(ああ、俺は、前にもここに来たことがあった―?)
[勘違いだろう、と理性はいう。図書室なんてどこも似たようなもんだ。紙と木の匂い、柔らかな日光と埃、黴たような空気。
既視感はすぐに去ったが、頭はふらついたままで、だから、いつの間にかそばにいた少女>>160にすぐには気づけなかったかもしれない]