―サロン→西の塔―[掌をジークムントに預けた血親の後ろを警戒しつつ進む。数歩前方をゆくジークムントの歩みはごく自然に血親に合わされていた。この2年で男もその歩調に慣れてはいたが、彼女をエスコートする事など出来ないだろう。この二人が並ぶさまも絵になるものだとぼんやりと思ったが、心の大部分は別の事に向いていた。結界が張られてから―正確にはその少し前からだったが―起きていた変化は男の心を乱す。それでも、自分を落ち着かせるように深呼吸をした後には、普段通りの表情を浮かべていたが。]