―薬草園―
[流石に王族の権力と言うべきか。
ここで手に入らない薬草はほぼないと言っていい。
緑生い茂る道を慣れた風に進む。
深緑の葉、黄色い花、茶色い種子
必要なものを頭にリストアップしつつ、それを必要分だけ摘み取り、
薬草籠へ放り込んでいく。
と、赤い実が目に入る。
この冬の終わりという風変わりな時期に成る、咳止めとしてはとても効果がある果実だ。
冬も終わりとはいえ、寒暖の差で体調を崩すものも出るかもしれない。
作っておいても損はなかろうと、実を採ろうとして]
グシャリッ……!
[熟れ過ぎていたのか、手の中で容易につぶれる。
そうして、紅い果汁が幾重にも筋となって手と袖口を染める。]