― 領主たる男の昏き深慮 ―
[育て親とも呼べる先代から。情と呼べるものを与えられたのは確かだが。
それが果たして親たる者の愛情だったのか、それとも罪の意識ゆえの憐憫だったのかは定かではない。
青年にとっての真実は
彼にとって先代領主は紛れもなくたった一人の親であり。
この呪いこそが親の仇であり――この呪いゆえに身体の成長が止まってしまった。
本来は非業の死に至らしめる呪いが、何故そうなったか。
血縁者にあたる高位の術者に訊ねてみたところによると。
先天的に呪いに対しての免疫のようなものがあるため何らかの反作用が起きたのだろう――。ということだった。
死の続いた自由領で、領主が安定するのは喜ぶべきことだろう。
男はひとり、取り残された気分に何度と陥ったが。――その感情には目を向けないようにしていた。]