− ウェントゥスの里 (回想) −
[自分がどのようにしてその里へ、部屋へ運ばれたのか、その過程でどのようなやりとりがあったのかはカナンの知り得ぬ範疇のこと。>>141>>143>>144
しばしは高熱にうかされて、自身の名も所属も失った。
もっとも、カナンの懐にある親書を読めば、彼の役割は知れるところとなる。]
「───カナン、聞こえるか?」
[脳裏に響く声の出所に惑乱し、看病してくれた
…おれに、 力を貸してくれ。
[毛皮ではなく、藁と毛織物の寝具の肌触りに、生国セドナとも、木綿を主とするマチュザレム共和国の生活ともいささか異なる感触を覚えつつ。]