― 王宮・中庭 ―
[それは足早に中庭を過ぎようとしていたところだったろう。
羽ばたきが、聞こえた。>>145
ばさり。と、大きな鳥の羽根特有の音に思わず、空を仰ぐ。
時ならぬ白雪の降るものかと探した視線は、空ではなく地上に人の姿を捉えた。>>146
予想していた人だった。
けれど当たれば当たったで驚くもので、ウェルシュは僅かに目を見開いてその人を見る。]
……ジュード、
[久しぶりに呼ぶ名前。昔とは違う、本当の名で呼びかけてくる彼が歩み来るのを、足を止めてじっと待った。ただ姿だけを見れば、あの頃のようだ。……それが勘違いであること、過去と同じものが戻らぬことなど、もう痛いほどに良く知っているけど。]