[>>152黙らせるおまじないとしては十分な効果を発揮したらしい。毛並みを整え清める獣の様な色気と無縁の所作で唇に残る血の名残を舐め取れば、やはりその味は酷く甘ったるく渇き切った咽喉を焼いた。
泣き出しそうな彼の目尻にも、其処に未だ無い涙を吸い取る様な啄むだけの口付を、右に左に、ひとつずつ]
[覗き込んだ双眸に、戸惑いと、怯えと、…――僅かな期待が見えた気がしたのはきっと、自身の願望が見せる幻想だろう。
全部纏めて一緒くたに笑い飛ばす。そうして彼を欲する肉欲を律し、制御した。正しく「彼を」欲している訳ではないと、それ位の事は足りぬ頭でも理解出来たから。
きっと目の前に居るなら今の自身は誰であろうと求めただろう、そんな気の迷いで、彼を…――彼だけは汚したくなかったから]
[未だ年若い身体は精神に反し一向に落ち着く気配を見せないけれど、まぁその辺りは致し方ないだろうと割り切って。
――そんな折に、まるで見計らったように普段休ませ通しの自分のイドが戻って来て、各々の部屋を巡って集めた皆の様子を二人に開示しただろう]
……――さて、現状確認と行こうか、先生。
何か、…知ってる事はある?