[宵待草が風に揺れて、蛍袋が帰館を祝ってしゃらしゃら鳴り響く。荘厳な鐘の音にも聞こえ、もう一度愛妻を娶るように交わす接吻。両腕が彼女の後頭部と背を抱きこみ、淡色の髪が紗と変わる中。発露する感情を愛しむよう啄ばみ、笑気ごと、多幸ごと、彼女の齎す光を飲み込んだ。>>92きっと、永久に彼女に溺れるのだと確信を抱いたまま。腹の底に広がる温もりは、寂しい闇をポッと灯した。―――そうして、深淵の底に、漸く孤独を拭う白夜が訪れる。*]