− 箱船 −[振り下ろした刃は、マレンマが動いたために首筋を捕らえ損ねた。迎え入れるように開かれた胸郭を断ち割り、その奥の鼓動を貫く。 結果は、同じだ。 けれど、死の意味は、すり替えられた。 苦しみの終わりではなく、栄光の始まり。殉教の陶酔に笑む双眸に、ダーフィトは憐れみと嫌悪を同時に感じた。彼が天に捧げられるための鍵として利用されたと感じる。]