―宿屋・談話室―[暖炉の傍らに眠るペーターと揺り椅子で微睡むゲルト。穏やかな光景と暖炉の火の温もりに、少女は安心したように小さく息を零した。ゲルトの傍らのヨアヒムに挨拶をして、眠る二人を起こさぬよう静かに室内に入ると、古びた表紙の本が視界に映る>>88リゼットは文字が読めない。身近に本などなかったし、文字を学べる環境など存在しなかった。それなのに、背表紙に刻まれた題名>>0:22が、どうしてか気になって、つい、まじまじと見つめてしまう]