[ぐぐもった呻き、杖が外れてしまった男が発する叫び声、暴れる男の腕があたったのだろう短い悲鳴、何かが起きる度に慌てふためく野次馬たち、そして自分の怒鳴るような指示の声。
―――そして、シャツの袖口を赤く染めながら、男への処置は終了する。
男が懸念したよりも出血の量は多くなく、余程のことがない限り、助かるだろうということはわかった。
だが、処置の最中、相手が暴れた拍子に、目の上を軽く切ってしまった事が気にかかる。すぐに治りはしたものの、その瞬間を誰かにみられていなければいいのだが――…
ダーフィトはどんな様子だろう?
今の今まで、そちらを見る余裕などなかった男は、その時になって彼を見た。*]