――キスは、しない。[一度目にしたのに、なかったことにした光景が脳裏へ甦る。くちづけて、酒を飲ませ、絡めた舌へと牙を立てるその光景が。恐らくは目前の相手に冷やかされるであろうその言葉、けれど、顔色を変える事無く血を味わい。]血塗れたであろう彼の指先、根元から先端までを舐め取れば鎖骨上、首の付け根へ牙を埋め、空き手でベルトを外しながら次第にその身へ覆い被さり、白い肌の上へ赤い髪を拡げていき。くちづけと呼ぶには余りに凶暴なそれが、彼の胸元を滑り落ちる。